【イベントレポート】国際女性デーイベント「NZ STEM Women’s Leadership」Vol. 3

こんにちは!Girls in Tech Japanの田中です。

2021年3月13日に、国際女性デー(以下「IWD」)に合わせて、ニュージーランド大使館の留学促進機関 エデュケーション・ニュージーランドとオークランド工科大学と共催の下、STEM分野での研究や就職を考えている次世代の女性たちを応援するオンライン無料イベントを開催したので、その様子を報告します!

今回の記事は、イベント報告 第3弾レポートです!
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<パネルディスカッション>
ファシリテーター:ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド駐日代表 北岡氏
パネリスト:Mahsa先生、現役AUT日本人留学生 平子さん、Girls in Tech Japan(以下「GIT」)代表 加藤、GIT クリエイティブマネージャー 月山

テーマ①なぜSTEM分野に女性が必要なのか?

北岡氏:特にTech分野などのSTEM分野は、男性がリーダーシップを取っているイメージがありますが、なぜSTEM分野に女性が必要なのでしょうか?

AUT平子さん:私自身も今まで意識して考えたことなかったのですが、女性がSTEM分野へ進出することは「男女間の賃金格差の解消」や「女性の経済的自立」のために良いことだと思います。
NZは日本と同じく、STEM分野における女性の割合は多くないですが、NZの場合、男女の賃金格差が少なく、履歴書に性別を記入する必要がないなど、女性にとってチャンスが多い国である印象です。

GIT月山:私もアメリカで働いていた時に、履歴書に写真や性別を掲載する必要がないことが多く、男女問わず平等に機会を与えられていると感じました。
また、私は女性がSTEM分野に進出することは、企業に経済的メリットを与えると考えています。実際に私がアメリカのスタートアップで働いていた時、経営層に女性がいないと投資に興味を持ってもらいづらいケースがあると聞いたことがあります。

GIT加藤:まず、STEM分野に女性が必要な理由としては、今STEM分野にいる女性たちが動きづらい点や、これからSTEM分野に加わりたい女性たちが入りづらい点があると思います。
実際に、私が製造業の研究職に従事していた時、200名中、女性は4名しかいなかったため、自然と目立ってしまい、周りの社員から珍しがられた経験があります。
ただ、最近ではSTEM業界に良い動きが見られていることも事実です。先ほど月山から話があったように、STEM分野に女性が進出することで、経済的効果が出てきています。
Harvard Business Reviewの研究結果によると、役員に女性が一人でもいる会社は、女性が一人もいない会社に比べて、営業利益が10%近くも高いというデータが出ています。
企業にとって、女性の数を増やすことはもちろん、将来的に経営層に女性を含むことで、経済的なリターンが得られることが評価されるべきです。この点は、すでに海外の企業では評価されているので、日本でも評価してもらえるようにしていきたいです。

だからこそ、私たちGIT Japanのミッションは「日本経済を牽引するSTEM女性を増やします」「組織や前例を変えるほどのイニシアティブを取れる、新しい価値を創造できるSTEM女性を増やします」としています。

また、冒頭で平子さんが触れた男女の賃金格差について、OECDの調査データがあったので確認してみました。
そこで、衝撃的なデータがあったのですが、なんと日本のSTEM分野の女性は、同じSTEM分野の同一労働の男性と比較すると、68%しか給料をもらえていないことがわかりました。
一方でNZは90%でした。平子さんが感じた「NZの方が女性が働きやすい」という点は、間違いなかったのかなと思います。

また、アメリカの調査データによると、STEM分野の女性の給料は、STEM分野以外の女性の給料と比べて、30%ほど高いという結果もありました。
このことからも、STEM分野に女性が進出することで、経済的リターンが得られることが分かっているため、日本でも一刻も早く、多くの女性たちがSTEM分野に進出できたらと考えています。

北岡氏:確かに、より多くの女性にSTEM分野での就労機会が与えられることで、(社会や企業にとって)経済的効果につながることは納得できますね。
日本におけるSTEM分野の男女の賃金格差は悲しい現実でしたが、Mahsa先生はNZにおけるSTEM分野の女性が置かれている状況について、どうお考えでしょうか?
経済的効果以外にも何かメリットがあったら教えてください。

Mahsa先生:先ほどのパネリストたちの回答は本当に素晴らしかったです。
彼女たちのような存在がいることが、業界に女性を多く取り込むためには必要です。
STEM分野に多くの女性が必要な理由はたくさんありますが、私が感じるのは、まず、テクノロジーが私たちの生活の全てを再構築している点です。
私たちはテクノロジーに囲まれています。ほとんどの人がスマートフォンなしでは生きられないほどです。
そして、この世の中でテクノロジーを使っている人口のうち、半分は女性なのです。
だからこそ、テクノロジーを構築する側にも女性の視点が必要なのです。
消費者としてだけではなく、創る側にも女性が必要なのです。
多様性ある組織が企画から製造まで、当事者の声を反映しながら作っていくことで、「女性である私の声に、想いに、応えてくれているな」と感じられることは、とても重要だと思います。
一方で、残念ながら現状は女性の声がまだまだ反映されていません。NZでも、ICT分野に携わる女性はたった27%であり、もっと多くの女性がSTEM分野にも進出できるようにしたいです。

北岡氏:なるほど、消費者に女性がいるのだから、開発/製造する側にも女性が必要ですよね。なぜ女性がSTEM分野に必要か、とても納得できるお話でしたね。

テーマ②テクノロジー業界の男女格差/バイアスを変えるために、何が必要だと思いますか?

北岡氏:STEM分野というと、特にテクノロジー業界などは、男性が一日中暗い部屋でパソコンに向かって作業するようなイメージを持っているのですが、そのようなバイアスを変えるために、皆さんの考えを教えてください。

AUT平子さん:私は「学びたい!やりたい!」と思ったことに対して、個人が積極的に行動することが大切だと思います。
以前、夏休み期間中に、NZにある小さなIT企業でソフトウェアエンジニアとしてインターンシップをしていたとき、主にアプリの開発協力をしていたのですが、会社の技術職の中で、女性は私一人だけでした。
当時は、自分の中でも「プログラミングは女性より男性の方が得意だ」と思っていたため、最初は女性一人だけの環境にとても緊張していました。
ですが、会社の皆さんが暖かく迎え入れてくださったことで、偏見なんて持たずに、自分のやりたいことを素直にやれば良いんだと気付きました。
また、先ほどMahsa先生から話があったように、アプリは女性も使うものなので、女性が開発に加わることで、女性ユーザーのニーズに応えられると思います。

GIT月山:私は無意識のバイアスの原因として、解像度の高い情報へのアクセスのしにくさがあると思っています。
高校生だったころ、将来は航空宇宙工学の道に進みたいと考えていたのですが、当時は先生以外と接する機会がなかったために、女性として航空宇宙工学専攻として大学に進学し、その後どのようなキャリアを歩めるのか参考になる情報がなく、その分野に進学することを諦めてしまいました。
自分の周りにロールモデルとなる人がいない/少なすぎると、その分野に興味を持っていても努力を続けるモチベーションが下がってしまい、このような状況が無意識のバイアスを作ってしまうのではないかと感じています。
定量的なデータは検索すればすぐに出てきますが、もっと解像度の高い情報へのアクセスは難しいことが多いです。私は、GITのイベントなどで各業界の先駆者である先輩たちのお話を提供することが、一つの解決策になると思っています。

GIT加藤:GITが組織として偏見を変えるためにやっていることは二つあります。
それは、①マイクロアグレッション、②マクロアグレッション、この両方へのアプローチです。

まず①マイクロアグレッションは、日常に入り込んでしまっている無意識のバイアスのことです。
私たちGIT Japanは、本日のようなイベント、ブログ、SNSなどを通じて、様々な業界で活躍する、日常生活では接する機会のない女性たちのストーリーをシェアすることで、参加者の方々の視野を広げて、進路の/人生の選択肢を広げていきたいと考えています。

②マクロアグレッションは、制度的、社会構造からくる抑圧のことです。
例えば、2020年のOECDの調査によると、日本は国会議員の女性の割合が10%、企業の管理職の女性の割合は15%しかないというデータがあります。
マジョリティは特権を持つため、政治や経済分野における意思決定の特権を男性が持っていることになります。つまり、日本の社会は男性の視点をもとに設計されているということになります。
この状況を解決するためには、例えばマジョリティがマイノリティ側の視点を取り入れられるように教育を変えることなどがあります。

GIT加藤:これは私の体験談ですが、日本企業にいた時に、50代の特権を持っているリーダーの意見に対して反論したら、その後ずっと敵対視されてしまった経験があります。
彼のいち意見に反対であっただけなのに、その後、場の空気が悪くなり、仕事が進められなくなってしまいました。
一方で、現在勤めているアメリカの企業では、年齢も性別も肩書きも関係なく、意見を言うことができます。
これは、両国の初等教育の違いで、議論に慣れているか否かが原因だと思っています。このように教育などの「マクロアグレッション」を変えるためには、GITの活動だけでは難しいです。
そのため、本日のようなコラボイベントや、同じような志を持った人たちと繋がりながら、社会を変えていけたらと思っています。

さらに、多様性というと、性差だけでなく、もっと複雑なものだと思っています。
男女や肌の色などの分かりやすい属性ではなく、多様な意見を取り入れたディスカッションをすることが重要だと思います。
何よりも大切なのは、誰もがやりたいことに挑戦できて、平等に評価されることです。
その実現のために、私たちGIT Japanは、一緒に活動できる人を探しているので、少しでも興味のある方は、ぜひ私たちに声をかけてくださいね!

北岡氏:Mahsa先生が言っていた開発側に女性がいないことや、平子さんや月山さんが言っていたゲーム業界などは男性に偏っていることなどの解決には、GIT Japanのような活動がとても大切だと改めて感じました。
Mahsa先生はNZでのSTEM業界におけるジェンダーバイアスについてどう思っていますか?

Mahsa先生:今テクノロジー業界で最も熱い議論がなされているAlgorithmic Bias(偏見的アルゴリズム*)についてお伝えしたいです。
まず、AIとはコンピューターが人間の意思なしに問題を解決したり、評価したり、判断したりすることができる仕組みのことです。
そして、偏見的アルゴリズムとは、無意識のバイアスがコンピューターを使った仕組み上でも行われてしまうことです。
つまり、人間が日常生活で行っている無意識の偏見が、そのままAIのシステムに組み込まれてしまうのです。
システムを開発する側に多様性がないと、システム自体も偏見を持ってしまいます
そのため、私たちは多様性を持った組織を作ることが大切なのです。

また、このような状況を変えるためには、私たちはテクノロジー業界に関する表現やイメージを変えていく必要があります。
多くの場合、女性は蚊帳の外であるイメージがあるため、テクノロジー業界をオタクっぽい、コーディングをずっとしているようなイメージではなく、次世代にはもっと顧客視点(次世代の視点)でテクノロジー業界を語る必要があります。
なぜなら、私を含め、私の娘や私たち女性もテクノロジーを使って、社会的課題を解決したいし、より良い世の中の実現に貢献したいと思っているからです。
次世代に向けて、どのような表現やストーリーを伝えていくかも、私たちの将来の社会を変えてくれる大切なことだと考えています。
(*)「偏見的アルゴリズム」について詳しく知りたい方はこちらをご参照下さい。

北岡氏:無意識なジェンダーバイアスがアルゴリズムに反映されてしまうことは恐ろしい事実ですね。
だからこそテクノロジー業界における多様性や、テクノロジー業界を語る時の表現などが大事なのだと改めて気づかされましたね。

***

皆さん、パネルディスカッション(前半)はいかがでしたか?
STEM分野、特にテクノロジー業界は、私たちの生活になくてはならない産業です。
だからこそ、多様な視点が取り入れられるべきですし、私たちGirls in Tech Japanは、STEM分野に挑戦したい女性たちを応援する、サポートする存在でいたいです。
無意識のバイアスを取り除くことは簡単ではありませんが、このような課題があるということに気づいただけでも、大きな一歩だと思います。

次回、パネルディスカッション後半編では、参加者からの本音を交えたQ&Aセッションで、さらに深く、私たちが今からできるアクションなどについてお伝えしていきます!

最後までお楽しみに〜!


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